就職で失敗した東大生が挫折を乗り越えていった話〜就職できない東大生のリアル〜

就職で失敗し、挫折した東大生がもんもんと考えたことを書いたブログです。東京大学に合格し、将来への期待を胸に頑張るも全然上手くいかず・・・。人生に行き詰まり、一転負け組になる。現在は人徳のあるベンチャー企業に拾ってもらい、日々社長のもとで奮闘中。

ちょっと変わった東大生の読んだおすすめ本   <第4回>宮本武蔵『五輪書』

 少し更新が遅れてしまいました(^_^;)
 途切れと途切れの更新にもかかわらず、読んでくださっている方がいることに、いつも感謝しております!

 今回は、またおすすめ本コーナーにさせていただきます。
第4回は、鎌田茂雄さんの訳注と解説の入った、宮本武蔵の『五輪書』を扱います。

 本書『五輪書』は、皆さんご存知の剣豪宮本武蔵が、人生の最後に、自らの兵法の奥義を書物としてまとめたものだそうです。私は、原文に加え、鎌田茂雄さんの訳文や注、解説文などをつけて出版されたものを読みました。


   

 私が本書と出会ったのは、大学で合気道の稽古に励んでいるときでした。しかし、当時は、興味深く読んだのですが、なんか凄いなとか、先生方や先輩方が言っていることに近いなとか、それくらいしか感じとることができませんでした。 かなり奥が深いので、1回読んでそういうことか!、とわかる本ではないように感じます。当然、私などではよくわかりません。

 しかし、就職をして環境が変わり、そこで改めて読んでみて、これはこういうことではないかという気付きが出てきました。

 そのため、今回は本書について、私の経験を交えて書かせていただきます。



  以前読んだときには、この本で印象に残ったのは、「役に立たぬことをしない」「武蔵は理にかなったことしかしなかった」という指摘とか、「仏神を頼まず」「武蔵は仏神を尊敬したが、頼ることをしなかった」というような文章でした。本当に厳しい生き方をしていたんだなと感銘を受けた記憶があります。
  また、同時に、晩年には世を捨てて、詩歌、茶、書、彫刻などに没頭したという記述もあり、武蔵って剣で戦ってるイメージしかないのに、芸術的なこともやってたんだ、意外!と思った記憶があります。
 逆にいうと当時の私には、それくらいしか感じとることができませんでした(笑)

 しかし、これらの印象に残った点は、今振り返ってみると、全て解説文に書かれていることでした。つまり、後世の人が武蔵の文章を読んだり、どういう人生を送ったかを調べたりして、どういう風に解釈したのか、ということからしか学んでいなかったのですね。
  わかりやすくいうと、自分は武蔵ではなく、武蔵から学んだ人から学んでいたんです。
  ずっと昔の、全然違う世界に生きていた人なのですから、それが当然なんですけれどね。


 その当時から数年が経ち、学生だったのが社会人になり、大学で勉強していたのが実力主義ベンチャー企業で働くことになり、がらりと環境が変わりました。
 なんというか、とにかく自分自身で戦って生きなければいけない世界になったんだと思います。そこでちょっと気が向いて本書を読み返してみたら、解説ではなく、武蔵本人の(?)古文体の文章が、あ、これってこういうことではないかなと感じられるようになっていて、自然と心に入ってきたんです。

 今回は、その中で1番印象に残った箇所をご紹介させていただきます。



 私の心に響いたのは「兵法三十五箇条」の1文でした。

「心持ちの事 
 心の持ち様は、めらず、からず、たくまず、おそれず、直ぐに広くして、意のこころかろく、心のこころおもく、心を水にして、折にふれ、事に応ずる心也。」

 よくわからないと思いますが、この文章は訳文がなかったのでそのまま書かせていただきます。

 私はこの文章を、
「心の持ち様で大切なことは、恐れなどの感情で頭をいっぱいにするのではなく、水面のように澄み渡って落ち着いた心境で、頭で意識的に考えることは少しにして、心で直感的に感じることをメインにする、そして水のような柔軟な心で、その時その時、臨機応変に物事に対処するという心構えが大切である」
という意味だと解釈しました。


 なんといいますか、頭を使いつつも頭でっかちにならず、柔軟に、そのときそのときの状況に応じて物事に対処できるようになる、というふうなことではないかと感じました。

 

 私は、やはりこれまでは、勉強ということをひとつ大きな軸としてやってきました。そのため、どうしても理屈で考えて、こうなるはずではないか、こうなるべきではないのか、と頭でっかちに考えてしまうことが多くあります。そして、予想通りにいかないと、なんでこんなふうになるんだろう、わけがわからない、と困惑してけっこう疲れてしまいます(笑)。そしてあてずっぽで行動してまた、疲れてしまいます(笑)
  現実の人生を生きていくには、多分、頭を使うことも、直感的に行動することも、両方大切なんだと思います。
 一方ではなく、両方必要で、その適切なバランスが、「意のこころかろく、心のこころおもく」なのではないかなと私なりに思いました…。

  具体的には、例えば、ビジネスマナーの本を読んで、マナーとはこういうことだと頭で理解しても、それで実際何か上手くできるわけではないですよね。その知識を頭の片隅に置きながら、実際に人の中でもまれて、ひとりひとりに応じて、さらには状況状況に応じて、対応していくことが大切なんですよね。マナーの席次と違う位置に先輩が座られても、その方の意図を汲んで焦らず対応する、みたいな…。


 頭を使いつつも頭でっかちにはならず、心の声に耳を傾けて行動しつつも、全く何も考えないで行動するわけでもなく、両方をバランスよく兼ね備えて生きていく。そして、自分が水になったつもりで柔軟に、次から次へとやってくる困難に対応していく、そういうことが必要なのかなと思います。


  社会で毎日生きていくのは、私にとってはすごく大変なことですし、辛いことばかりです。日にちの決まったテストと違って、予期せぬときに予期せぬ困難、嫌なこと辛いこと、が現れます。
 そんな中で、頭で考えていては世の中理解できないことばかりだし、対処しきれないことばかりです。だから、あまり考えすぎず、適度に考えながら、水のように生きようと思いました(笑)。



   最後に、すごく個人的なことですが、自分は武人の中では宮本武蔵のファンだなぁと思いました。人気どころだと、信長や秀吉、家康あたりとか、坂本龍馬西郷隆盛あたりとか、コアなところだと、高杉晋作とか、あと中国の孫子とかにファンがけっこうついていますよね。
 私もそういう方はすごいと思うので、どんどん学びたいと思います。でも自分はやっぱり武蔵が1番好きだなあと感じます。なぜかはわかりませんが、それはもしかしたら、武蔵が自分の道をひたすら生きた人だからかもしれません。人の中で生きつつも、なんだかんだひとり我が道をいく、みたいな…。そういうところが好きかもしれない、と思うこの頃です。

   社会で生きるのは日々いろんなことが起こってほんとうに大変ですけれど、自分の軸を持ちながら、柔軟に生きていきたいものですね…。

 

参考URL:

五輪書 (講談社学術文庫)